
—NGO・NPOを活性化し、何かを創造していく場で相互作用を促す役割を担うファシリテーターとして、多くの企業のCSRに関わってきたと思いますが、企業のCSR活動の現状について伺えますか?
そうですね。ここ数年を見ていて、CSRに取り組む企業が増えてきました。それは、高く評価できることだと思っています。だけど、本当にこれで良いのか、と心配している面もありますね。キーワードで説明すれば、企業におけるCSR活動が、時に「表面的」「部分的」「操作的」になっているということでしょうか。具体的いえば、「表面的」というのは、企業がCSRを広告のように利用するということです。ある企業に話を聞いたのですが、その企業は、長年、DV(ドメスティックバイオレンス)という社会問題に真摯に取り組んでいました。でもその活動を外面的にイメージ良く伝えることができないと、会社としては「わかりにくいならやめよう」という判断になりやすいそうです。
—「部分的」といのは、どういうことなのでしょうか?
CSRが企業の全体に浸透していない、一部の人間だけの取り組みになっているということです。ある大手企業のケースですが、お昼になると社員のほとんどが、近くのコンビニでお弁当を買う。毎日、毎日、それをレジ袋に入れてもらっています。ところが、公式サイトを見ると、「社員一人一人が、環境のことを考えて行動します」とある。つまり、担当者レベルでは、一生懸命取り組んでいるんだろうけど、社員には本当の意味で浸透していないというケースですね。
—「操作的」というのは、グリーンウォッシュ(Greenwash)といわれる行為のことでしょうか?
その通りです。例えば、環境に負担が大きい事業を推進しているのに、まるで環境に配慮をしているように対外的イメージを「操作する」ということです。ある企業を例にとれば、環境団体に助成金や寄付金といった形でサポートをしておく。それには意図があって、環境に悪影響のある事業を隠そうとして、サポートしているのです。つまり、環境団体からの攻撃の手をそらすためで、グリーンウォッシュの典型といえます。

—あくまで自社のイメージを守るために、環境に配慮しているとアピールしている企業。その矛盾をどうすれば、解決できるのでしょうか?
そうですね。海外のNGO・NPOでは、チェック体制があり、「それは、グリーンウォッシュだろうか?」という視点を常にもっています。ただ、日本の場合、企業にブレーキをかけられるほどの強さをもっているNGO・NPOが少なすぎるのが現状です。
—企業に対して改善を促せるほどの強さとは、NGO・NPO団体の体制にも関わることだと思います。
そうですね。結論からいうと、体制が取れていない。日本のNGO・NPOで有名な団体でも小企業クラス。「日本野鳥の会」「WWF」「日本自然保護協会(NACS-J)」といった全国的に名の通った団体でも、従業員数は50人前後です。それでは、単純に大手企業に、問題提起をするのも厳しい状況と言えます。企業という巨人に向かって、叫ぶアリ。そのアリがNGO・NPOといった感じです。でも、私は小さな一撃でも強いアリ、確かなアリが必要だと考えています。

—アメリカのNGO・NPO団体は、市民による寄付税制で成長していったという経緯があります。
日本でも「ふるさと納税」という寄付税制に似ている制度の導入が検討されています。でも、結局のところ、税金は官庁へ流れている。民間非営利団体にもお金が配分される寄付税制が重要となっています。非営利のセクターに健全な競争を入れれば、官庁や自治体、しいてはNGO・NPOを強くできる。そういう仕組みを作っていきたいですね。
—日本も市民がNGO・NPO団体を積極的に支援する仕組みができるでしょうか。
先日、私の所属する団体へNGO・NPOへ寄付してもらうイベントを企画し、開催したところです。企業は今、取り組みやすいNGO・NPOから恊働を始めています。今後、矛盾のないCSR活動のために、NGO・NPOは、企業との力のバランスをとる必要があります。NGO・NPOは、成長していかなければなりません。それには、市民の支援が必要だと考えています。
―どうもありがとうございました。
* 本記事は2007年11月に行った取材をもとに再構成したものです。


青木将幸 Masayuki Aoki
1994年より、学生環境サークル、エコ・リーグ、A SEED JAPANなどで、オゾン層、森林、地球温暖化、若手リーダーの育成などをテーマに環境NGO活動を開始。企画会社勤務を経て2003年に独立し、青木将幸ファシリテーター事務所を設立。会議や研修の場面におけるファシリテーター(進行役・促進役)の育成と実践を行っている。
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