
―日本では「社会的責任」と訳される“CSR”ですが、その内容は世界共通なのでしょうか?
CSRの定義は、世界各地で異なります。たとえば、欧州ではステークホルダー(消費者、労働者、株主、NGOなど)が企業の不祥事を監視、それに対して声を上げることで企業側が認識し、企業が不祥事を解消するための活動を行うことにより、CSRに結びついていきます。
一方、日本ではずっと以前から、企業が自分たちの不祥事に対して自ら反省して、危機感を持って是正するように動いていました。その折に、CSRという言葉が海外から「来日」し、自分たちの企業活動に当てはめたんです。ですから、欧州と日本ではCSR活動が生まれる根本も、そのとらえ方も異なっています。
―“CSR”の本質とはなんでしょうか?
CSRの本質を簡単にまとめると「世の中の心配事や不安に対する、生活者たちのリアクション」といえます。現代における心配事や不安というのは、たとえば、地球環境の問題、格差の問題、感染症の問題など。本来、これらの問題は政府が解決してくれるはずですが、多くの国の政府がその担い手として機能していない実態にある。
そこでステークホルダーたちは、これらの問題の一端である企業に対し、国境を越えて、心配事や不安を政府に代わって解消してほしいと考えます。これまで政府が担ってきた役割の一部を企業に担ってもらいたい、と。私は、そういう「期待」がCSRの本質だと理解しています。

―企業がCSR活動をすることで得られるメリットとは何でしょう?
企業としては、単純に世の中に良いことをしようと道徳的にはなれません。CSR活動を行うためのしっかりとした意義が必要です。そういう観点での企業側のメリットは、企業価値の向上といえます。これまで、市場における評価基準は、お金に換算できるものが主体でした。
ところが最近、社会的な長期のベネフィット、人間的な意義、社会的な意義といった、これまでお金に換算されなかった要素が重視されるようになってきた。感度の高いステークホルダーが増えていますので、CSR活動に取り組む企業は自然と注目度が高まります。
また、投資の観点で見ると、純粋な企業活動だけではなく、継続的にCSR活動へ力を注げる企業は、財務体質的にも安定感のある企業と判断できます。結果的に投資面でも魅力がある企業とアピールできるわけです。

―理想的なCSRとはどのようなものでしょう。足達さんの考えを教えてください。
今の日本の状況をみると、企業はがんばっているが、ステークホルダー側にあまり高い意識が感じられないんですね。欧米ほど厳格に過激に活動する必要はありませんが、もう少しステークホルダー側も主体的に動いてほしいと思っています。
消費や投資、預貯金する際、その企業が環境問題や社会問題に対してしっかり対応しているか、しっかり見極めたうえで選んでもらいたい。企業を鍛えるのは私たちだ、という意識や自覚を持ってもらいたいですね。
弁護士の國廣正先生の言葉に「CSRのCはコーポレート(Corporate)のCであり、シチズンズ(Citizens)のCでもある」というのがあります。企業のCSR活動に対して消費者が購買などで応え、そして企業のCSR活動の質が高まる。私は、そういうメカニズムが理想のCSRを構築していくのだと思います。
―どうもありがとうございました。
* 本記事は2007年11月に行った取材をもとに再構成したものです。


足立栄一郎 Eiichiro Adachi
一橋大学経済学部卒業後、株式会社日本総合研究所入社。経営戦略研究部、技術研究部を経て、現在ESGリサーチセンター長。主な業務は、企業社会責任の視点からの産業調査、企業評価で、関連する著書も多数ある。
![]()
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前4-3-15
東京セントラル表参道317
株式会社 エヌプラス
tel:03-5775-0292/fax:03-5775-0293
csr@nplus-inc.co.jp